「しゃべり方」で分る3人のリーダーの新型コロナ構想
トーク・スピーチ
どんな生き方をして、どんな環境で過ごし、何を考え、どこを目指しているか、また相手への思いや、互いの関係性、余裕などもすべて、表情を含めた「しゃべり方」に表れます。
しゃべり方が上手いとか下手とかは関係なく、「しゃべり方」は本質がそのまま表れてしまう大変興味深いツールです。
新型コロナウィルスのニュースが連日放送されていますが、
改めて日本の3人のリーダーの「しゃべり方」に注目してみましょう。
まずは、安倍総理大臣です。
<視線>
空中を見ているようなフワフワとした視線。
テレビカメラを意識しているときも、していないときも、常に視線は「見えない空中」に注がれています。
もしも、安倍総理と一対一で話をする機会があったら、私を見ているのか、空中にある「見えない何か」を探しているのかが分からず、戸惑うかもしれません。
<表情>
感情を表さず飄々としています。
これは様々な会見や答弁を経験し、うかつに感情を表情に会わらすことが不利であると確信しているからでしょう。
<しゃべり方>
何かを読んでいないときも、文章を読んでいるかのように話します。
まるで駆け出しの役者さんがセリフを丸暗記してきたものの、しゃべりの緩急や強弱、ボリュームの調整や、感情の入れ方までは意識が向けられないといった感じです。
安倍総理は、視線、表情、しゃべり方、すべてにおいて波がなくエネルギーの強さが感じられません。言い方を変えれば、フェミニストというイメージでもあります。
続いて東京の小池都知事です。
<視線>
囲み取材のときは、やや伏し目がちで謙虚な雰囲気を、一人のスピーチのときはときどき聴衆に視線を合わせ、バランスのいい視線配りで話を進めています。どちらもキャスターとして「見られ方」を培ってきた成果と言えるでしょう。
<表情>
強さを感じさせるもののあえて温和に、大きく表情を変えずに話しています。
その表情は、相手ではなく小池都知事ご自身の頭の中に向けられているような印象を持ちます。
頭の中にあるたくさんの言葉から、的確な言葉を選び出し発信しようとすることを一番に考えるため、表情にあまり変化がないのかもしれません。
<しゃべり方>
さすがに元キャスターとあって、滑舌もよく、綺麗な発音でとても聞き取りやすいのですが、大きな特徴は「母音」です。
それで「えー」、昨日会議をしまして「えー」、皆様のご意見を「おー」…。
と、何度も母音を挟み込みます。
こうして母音の多いしゃべ方の人は2つのタイプに分かれます。
1つは、10代の女性に多い、甘えたしゃべり方です。「それでぇ、私がねぇ」というように依存傾向の強いタイプに多くみられます。
もう一つは、小池都知事のようにしっかりと母音を発音するタイプです。
このような方は間違うことを避け、言葉による誤解や非難を避けるため、母音を発音している間に的確な言葉を選び出します。
小池都知事の場合は、視線、表情、しゃべり方、すべての面から誤解や間違いを避け「見られ方」を第一に考えていることがよく分かります。
最後に大阪の吉村府知事です。
<視線>
まっすぐです。カメラがあればカメラに向けて、聴衆がいれば聴衆に向けてまっすぐな視線で話すため、聞いているほうは自分に向かって話してくれていると感じることができます。
<表情>
目を見開き、硬い意思を表すかのような強い表情で話します。
時には少し怒っているような表情に見えることもありますが、決意の表れだとも受け取れます。
<しゃべり方>
結論を先に言い、自分の意見をはっきりと打ち出します。「すでに決めた」というところから話し始めるため、迷いがありません。
自分が迷っていなければ、聞いている人も迷いません。
吉村府知事は、視線、表情、しゃべり方、すべての面で意思の強さを感じさせます。
■しゃべり方で見えてくるリーダーのイメージと構想
このように3人のリーダーは、まったくタイプが違いますが、何よりも興味深いのは、「しゃべり方」には、「しゃべり手の頭の中にあるイメージ」が映し出され、それが構想として聞き手に伝わるということです。
3人の頭の中にあるイメージは、下記のように感じ取れます。
安倍首相が描いているイメージは「感染者が少なくなったらいいなぁ」
小池都知事が描いているイメージは「東京の感染者はきっと減っていく」
吉村府知事が描いているイメージは「大阪は感染者ゼロになる」
しゃべ方ひとつで、聞いている人はこのようなイメージを持ちます。
もしかすると3人の頭の中にあるのは、まったく違うイメージかもしれませんが、聞いている人にはそう伝わり、それがリーダーの構想だと捉えられてしまうということですね。